王道から稀少な「幻の宝石」まで!知られざるカラーストーンの世界

王道のルビー、サファイア等から知る人ぞ知る希少な石まで、世界中には様々なカラーストーンがあります。同じ種類でも多様な色彩があり、知れば知るほどその世界の奥深さに引き込まれます。カラーストーンにはどのような種類があるのか、身につける際にはどのような点に気をつければよいのかなど、カラーストーンをもっと楽しむために知っておきたいことをご紹介します。

古来より人類を魅了してきたカラーストーン


カラーストーン(色石)とは、ダイヤモンドのように無色透明ではなく、赤や青、緑など様々な美しい色彩を持った宝石類を指します。宝石の王様といえばダイヤモンドというイメージがありますが、古代文明の時代から人類はカラーストーンの色彩が持つパワーや美しい煌めきに魅せられ、珍重してきました。また、宝石に造詣の深い人ほど、色彩に無限のバリエーションがあるカラーストーンにのめり込むと言われます。

まずは色の系統ごとに、代表的なカラーストーンを見ていきましょう。

ピンク系のカラーストーン

クンツァイト
紫がかったライラックピンクが特徴です。スポジュメンという鉱物の変種で、アメリカ・カリフォルニア州のサンディエゴ郡などで産出します。アメリカの著名な鉱物コレクターでティファニーの副社長も務めたジョージ・フレデリック・クンツがサンディエゴを旅行中にこの石を発見したことから、彼にちなんで「クンツァイト」 と命名されました。

ピンクスピネル
レッド、ピンク、ブルーなどの種類があるスピネルは、特にヨーロッパで人気の高いカラーストーンです。タンザニアやスリランカで産出しますが、特にミャンマー産のものが最高級とされています。ピンクスピネルの中でも、ホットピンクと呼ばれる強い色味のものがとりわけ人気です。

パパラチアサファイア
ルビーとサファイアは色合いがまったく異なりますが、実はコランダムという同じ鉱物です。コランダムの中で赤色のものをルビー、その他のものはそれぞれの色の名前を冠して〇〇サファイアと呼びます。パパラチアサファイアの「パパラチア」とはシンハラ語(産地であるスリランカの公用語)で「蓮の花」という意味で、ピンクとオレンジの比率がほぼ半々のサファイアを指します。産出量の極めて少ない貴重なカラーストーンです。

ローズクォーツ
水晶(石英)の一種で、紅水晶という和名の通り半透明で薔薇色~ピンク色の色彩が特徴です。身につけていると女性らしい魅力が高められると言われ、パワーストーンとしても人気があります。

モルガナイト
エメラルドやアクアマリンと同じくベリル(緑柱石)という鉱物の一種で、ピンク~オレンジの柔らかな色味が持ち味です。モルガナイトは、アメリカの5大財閥の一つであるモルガン財閥の創始者で有名な宝石コレクターでもあったジョン・ピアポント・モルガン(J.P.モルガン)にちなんで命名されました。

赤系のカラーストーン

ルビー
7月の誕生石として知られるルビーは、ラテン語で「赤い色の石」を表す「ruber」が語源で、和名では紅玉と呼ばれます。ルビーの中でも、ピジョンブラッド、すなわち「鳩の血の色」と呼ばれる深い赤の色合いが最高峰とされています。「情熱」「永遠の命」「美」「深い愛情」などがルビーの宝石言葉です。

ガーネット
1月の誕生石です。ラテン語で種子という意味の「granatum」が語源で、和名でも柘榴(ざくろ)石というように、ガーネットの原石はザクロの種子のような姿をしています。「真実」「実り」「一途な愛」などを象徴することから、欧米では生涯の友情や忠実な愛を確認するためにガーネットを送る風習があるそうです。

ルベライト(レッドトルマリン)
10月の誕生石トルマリンの中で、含有するマンガンによって赤く発色するものは「ルベライト」と呼ばれます。ルビーに勝るとも劣らない美しい赤色で、まだ鑑定方法が確立していない時代にはルビーとして扱われていたこともありました。ブラジルやアフリカで産出します。

紫系のカラーストーン

アメジスト
古来より紫は高貴な色とされ、限られた人々しか身につけることが許されませんでした。アメジストは水晶の一種で、紫水晶という和名の通り神秘的な紫色が特徴です。その透明度の高さから精神を浄化させるパワーがあると言われ、パワーストーンとしても人気があります。2月の誕生石で、「誠実」「心の平和」を象徴するとされています。

チャロアイト
スギライト、ラリマーと並び世界三大ヒーリングストーンとされるチャロアイトは、鉱物が混じりあうことで生まれるマーブル模様が神秘的な印象を与えます。。1949年頃に発見されたた歴史の新しいカラーストーンで、当初は彫刻などの石材として用いられていました。1978年になって、女性鉱物学者ヴェーラ・ロゴワの尽力により新鉱物チャロアイトとして認証されました。

スギライト
1944年に、愛媛県の岩城島で日本人鉱物学者の杉健一博士によって発見された比較的新しいカラーストーンです。杉博士が1946年に死去した後、研究は村上允英教授に引き継がれました。1975年に新しい鉱物と正式に認められ、杉博士にちなんでスギライト(杉石)と命名されました。日本人の名前がついた大変めずらしいカラーストーンです。

青系のカラーストーン

ブルーサファイア
9月の誕生石であるブルーサファイアは「慈愛」「誠実」などを象徴し、その名はラテン語で青色を意味する「sapphirus」に由来します。ブルーサファイアの中でも、透明度が高く深みのある青が特長の「ロイヤルブルー」と呼ばれるものと、矢車草(コーンフラワー)の花のような青色をした「コーンフラワー」と呼ばれるものが最も価値が高いとされています。

タンザナイト(ブルーゾイサイト)
ブルーゾイサイトは東アフリカ・タンザニアで1967年に発見されました。産出地タンザニアの夜空を思わせる青色から、アメリカの宝石会社によって「タンザナイト」と命名され、以後その名前が定着しています。トルコ石、ラピスラズリと並び12月の誕生石です。

パライバ・トルマリン
発光するようなネオンブルーが印象的なパライバ・トルマリンは、トルマリンの中で最も希少価値の高いものです。パライバ・トルマリンが世に紹介されたのは1989年のことで、産出地であるブラジル・パライバ州にちなんでパライバ・トルマリンと命名されました。

アクアマリン
エメラルドと同じくベリルの一種で、まさに海の水のような透き通ったブルーが印象的です。ブラッドストーン、珊瑚と並び3月の誕生石とされています。夜になるといっそう輝きを増すことから、「暗闇に陥ったとき、希望の光をもたらす石」と言われています。

ブルートパーズ
無色透明からブルー、ピンク、薄茶色などトパーズには様々なカラーがありますが、特に人気なのが涼しげなブルーです。日本でも1974年に滋賀県・田上山で8キロほどもあるトパーズが発見され、話題になりました。トパーズはシトリンと共に11月の誕生石です。

トルコ石(ターコイズ)
トルコ石はもっとも古くから親しまれてきた石の一つで、古代エジプトやペルシャ(イラン)、インカ帝国の遺跡などからもトルコ石を用いた装飾品が発見されています。空のように明るい青色が特徴で、スカイストーンとも呼ばれます。おもな産地はイランやエジプト、アメリカですが、トルコ経由で伝えられたためトルコ石と呼ばれるようになりました。

グリーン系のカラーストーン

エメラルド
翡翠とともに5月の誕生石とされています。エメラルドと人類の関わりは古く、紀元前4000年頃の古代バビロニアですでに用いられていたという記録があります。エメラルドという名はサンスクリット語に由来し、古フランス語の「エスメラルド」が直接の語源になったとされています。

翡翠(ジェダイト)
東洋をはじめ世界各地で霊力のある石と崇められてきた翡翠は、古代日本でも勾玉として使用されてきました。その神秘的な緑色がカワセミ(翡翠)の色を想起させることから、翡翠玉と呼ばれるようになったと言われています。翡翠にはジェダイト(硬玉)とネフライト(軟玉)があり、宝石として価値が高いのはジェダイトのほうです。

デマントイドガーネット
ブルー以外のすべての色があるといわれるガーネットの中で最も希少価値が高いのが、鮮やかな緑色に輝くデマントイドガーネットです。19世紀半ばにロシアのウラル山脈で発見され、そのダイヤモンドのような輝きから「Demantoid(=“ダイヤモンドに似た”の意)」と命名されました。非常に産出量が少なく、幻の宝石とも呼ばれます。

ペリドット
サードオニクスと共に8月の誕生石で、黄色がかった明るい緑が特徴です。夜間の人工照明のもとでとりわけ美しい輝きを発することから、「イブニング・エメラルド」という別名があります。

イエロー/オレンジ系のカラーストーン

シトリン
和名を「黄水晶」といい、色が柑橘類の果実に似ていることからこの名がつきました。商売繁盛や富、太陽などを象徴するカラーストーンです。

スペサルティンガーネット
「マンダリン」という別名の通り、マンダリンオレンジの果実そのままの色をしたガーネットです。スペサルティンガーネットが発見されたのは南ドイツの都市Spessartと言われていますが、現在ではアメリカ、アフリカをはじめ世界各地で産出しています。

黒・茶系のカラーストーン

ブラックオニキス
漆黒が美しいブラックオニキスは和名を黒瑪瑙といいます。黒という強い色から、邪念を振り払ったり悪意をはね返したりするパワーがあるとされています。

スモーキークォーツ
スモーキークォーツ(和名は煙水晶)という名称は、煙を通して太陽の光を見たときの色を指しています。鮮やかな色彩ではありませんが、控えめで上品な印象を与える魅力的なカラーストーンです。

様々な特殊効果のあるカラーストーン

オパール
角度を変えると虹のようにきらめく「遊色効果」がオパールの魅力です。遊色効果を持つ鉱物はオパールのみ。神秘性を感じさせるオパールはとりわけ日本で人気の高いカラーストーンです。

キャッツアイ
キャッツアイとは本来、まさに猫の目のように一条の光が走る猫目効果(シャトヤンシー、キャッツアイ効果)のことですが、キャッツアイ効果をもつ石(クリソベリル)そのものの名称としても使われています。キャッツアイ効果はトルマリンやオパールなどにも表れることがあります。

アレキサンドライト
19世紀のロシアで発見されたアレキサンドライトは、自然光の下では緑系に、白熱灯の下では赤系にとカラーチェンジします。産出量が非常に少なく、世界で最も価値の高い宝石の一つです。

ラブラドライト
オーロラのような光をもたらす虹色効果は「ラブラドレッセンス(=“ラブラドルの光”の意)」と呼ばれます。見る角度によって表情を変える神秘的なカラーストーンです。

貴石と半貴石の違いとは?

カラーストーンは硬度によって貴石(precious stone)と半貴石(semi precious stone)に大別されます。貴石とは、五大宝石(ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、アレキサンドライト)をはじめとする「硬度が7以上で希少価値があり、外観の美しい宝石群」を指し、半貴石は「貴石以外の宝石群」を指します。

半貴石が貴石より価値や質が劣るというわけではなく、半貴石にも価値の高いものはたくさんあります。なお、貴石と半貴石の分類は絶対的なものではありません。エメラルドやオパールは硬度が低いにも関わらず、外観の美しさや希少性から貴石として扱われています。また、業者によってが分類法が異なる場合もあります。

カラーストーンを身につける際の注意点

化粧品がつかないようにする
化粧品に含まれる成分がカラーストーンの質を劣化させてしまうことがあります。日焼け止めやファンデーションなど各種化粧品、香水などが直接つかないよう注意が必要です。化粧品の付着を防ぐよう、メイクが終わってからカラーストーンを装着するように習慣づけるとよいでしょう。使用後は速やかに外して、柔らかい布で乾拭きしてください。

食べ物の汁が飛び散らないようにする
食事の際に、調味料やジュースやドレッシング、ソースなどが飛び散ってカラーストーンに付着すると、変色や劣化の原因になります。液状の食品がはねないよう、十分注意しましょう。

カラーストーンを保管する際の注意点

直射日光のあたる場所や高温多湿の場所には保管しない
カラーストーンはデリケートです。紫外線や熱の影響で変色したり質が低下したりしてしまうことも。直射日光のあたらない、温度・湿度の低い場所に保管するようにしてください。

個別のケースに入れて保管する
カラーストーンの硬度は種類によって異なります。硬度の高いものと低いものを一緒にしておくと、硬度の低いほうに傷がついてしまう恐れがあります。保管する際は、それぞれジュエリーケースに入れ、個別に保管するようにしましょう。

カラーストーンの魅力は色彩が与えてくれるパワー

赤は情熱や生命力、青は聡明さや清らかさ、緑は癒しなど、カラーストーンの色彩には象徴的な意味合いがあります。色彩の持つパワーは身につける人の気持ちのあり方にも影響を及ぼすはず。自分の誕生石を身につけたり、取り入れたいパワーを持つカラーストーン選んだりなど、自分らしい楽しみ方ができるのがカラーストーンの魅力です。「自分のために存在する」と思えるカラーストーンを見つけてくださいね。

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