和食の美しい食べ方をマスターして大人のマナーを身に付けましょう

いざ大事な会食、という時に和食のマナーがわからないと困ってしまいます。

大人として身に付けたいのは、正しい食事のマナーはもちろん、
誰が見ても美しいと感じる食べ方。

染みついてしまった勘違いや思い込みを修正し、
和食を美しく食べられるマナーを身に付けましょう。

美しい食べ方には感謝と配慮が宿る


美しい食事の基本
美しい食べ方には2つの基本があります。
まずは、食事のシーンを一緒にしている人たちとコミュニケーションをとり、楽しく食べること。
そしてもうひとつは、食材の命や作ってくれた人に心から感謝して食べることです。

そのためには、まず食事中はなるべく下を向かず顔を上げましょう。
綺麗に食べようとばかり意識が集中して下ばかりを向いているのでは美しくありません。
顔を上げることで、同席者を大切にする心が表れ、コミュニケーションが図りやすい状況に。
それによって食事風景が華やかな印象になります。

また、ひと口の量は一寸(約3cm)程度までにします。
そうすると口に運んでから飲み込むまでの時間が短くなるため、咀嚼中に起こりがちな会話の中断も最小限におさえることができるのです。周りへの配慮ができていると、自ずと心に余裕が持てるようになり、「食への敬意」「同席者への敬意」にも繋がります。
食べ方は生き方の鏡です。正しいマナーはもちろん、ちょっとした気配りで劇的に美しくなる食べ方を実践してみましょう。

指先に心のゆとりが反映される、箸の扱い方


美しい食事の出発点は指先にフォーカスすること
人間を含む多くの動物は、本能的に動くものに注目をします。
そのため、食事中にもっともよく動く指先は、同席者の目にも自然と触れるパーツです。
そして指先には、リラックスや緊張など、心の表情がよく表れるもの。
箸を正しく持ち、リラックスして食事を楽しむと、その場の空気まで和んでくるものです。
正しい持ち方で手先美人を目指しましょう。
指先で心のゆとりを見せると、雰囲気までもが良くなります。


指先の力を抜いて、ふんわり軽く
箸の正しい持ち方は、中央よりも上の位置に持ち、人差し指と中指で上の箸を軽く挟みます。
下の箸は、薬指と親指の付け根で押さえて、上の箸だけを上下に動かします。
箸を持つ前に手の力を抜き、指先はふんわり軽く添えます。
ポイントは指先に力を加えないことです。
特に人差し指の力を抜いて軽く持つと、心の余裕が相手に伝わります。

食べ終わった後は、速やかに箸置きに戻す
食べ終わったら、利き手で箸の持ち手側を、もう一方の手を箸の中央に添えます。
利き手の指先を揃えて持ち手側を持ったら、ゆっくりと箸置きに箸を置きます。
割り箸は、一度箸を置いた後に箸袋に入れて袋の先端を折りましょう。

割り箸の美しい割り方
割り箸は膝の上で横にして、中央を持ち、扇を開くようなイメージで音をなるべく立てずに割リましょう
また、割った後は一度箸置きに戻すことがマナーです。

箸置きが無い時は?
箸置きが無い場合は、箸袋を折って箸置き代わりにします。
山形に折るか、結び文のような形にして、使わない時は箸先をそこに置きましょう。
また、箸を汚していいのは箸先3cmと心得て、食事の際はなるべく箸先を使うようにするのが美しいです。

やりがちなNG箸マナーに注意

「返し箸」
箸の持ち手側を使って相手に取り分けるのはマナー違反です。
別の箸を使って取り分けるようにしましょう

「探り箸」
お皿の上に積まれた食事を下から取り出すのはNGです。
料理は手前から食べ、食べ終わりまで美しい盛り付けをキープするのがお約束。

「渡し箸」
知らず知らずにやってしまいがちな渡し箸。
箸を使わない時は茶碗やお皿などに置かず、常に箸置きに戻すことがマナーです。

会席料理の美しい所作を身に付ける


五感を研ぎ澄ませてお料理を頂く
和食のフルコースである会席料理は、五感を研ぎ澄ませて料理と向き合いましょう。
その時期の旬な食材を使い季節を盛り込んだ料理は、四季を持つ日本ならではのもの。
美しい盛り付けを目で味わい、お吸い物の蓋を開けた時の香りを堪能する・・・
その表情や姿は、周りから見ても美しく映えることでしょう。
五感を使って料理を味わい、料理人や食材と繋がろうとする姿勢が、美しい食べ方に繋がっていきますよ。

会席料理の流れ
①先付け
大抵の場合は、お酒の肴の盛り合わせです。

②吸い物
口の中をきれいにするためのすまし汁。

③お造り
白身と赤身のお魚の刺身の盛り合わせ。

④煮物
旬の野菜が数種類入っている煮物。

⑤焼き物
肉や魚、海老などを焼いたものがポピュラー。

⑥揚げ物
野菜や魚介類の天ぷら、精進揚げなど。

⑦蒸し物
茶碗蒸しや魚・野菜を蒸したものが多いです。

⑧酢の物
魚介や野菜に酢を使って調理したもの。

⑨お食事
ごはんと、止め椀と呼ばれる味噌汁。

⑩水菓子
生の果物や羊羹、シャーベットなどの場合もあります。

先付けは左側か手前から食べる
先付けはいわゆる「お通し」と呼ばれるもので、ほとんどがお酒の肴の盛り合わせです。
盛り付けを崩さないように、左側か手前から食べ進めて最後まで美しく食べることが大切。
先付けは、季節を感じさせる器に盛られていることが多く、その美しさや盛り付けなども目で味わいながら食べましょう。
ひと口で食べられないものは、箸先で切り分けて食べます。
汁気の多いものは、食材の水分を落としてから口にするとうっかりこぼしてしまうことがありません。
盛り付けの美しさを目で味わい、それを維持しながら食事をすすめましょう。

お膳に出された料理は美味しいうちに
季節を感じながら「食べきる」ことが会席料理の基本思想。
お膳に出された料理は美味しうちに食べましょう。
会席料理を食べる時は、お膳の上に何品も溜めずに、美味しいうちに頂くのが基本のマナーです。
ただし先付け(お通し)は食事中にお酒を楽しむために、置いたままにしてOK。

ごはんと止め椀の蓋の扱い
ごはんと止め椀が済んだら、蓋は速やかに元に戻すようにしましょう。
ついやってしまう蓋を裏返しに置くのは実はマナー違反なのです。
食べ終わった器にも美しさは宿っています。
食後の器は、長い時間テーブルに残り人目に触れやすいものでもありますので、
裏を返せば、最後が美しいと「美しく料理を食べる人だ」と印象付けることができます。
また、「最後まで美しく」ということは美しい食べ方の基本でもありますので注意してみてください。

懐紙を使ってマナー上手になりましょう
多くの種類の料理が出てくる会席料理。
美しく食べる時に欠かせないのが懐紙です。
食事中の器、グラス、口元、箸先の汚れを拭く時にも重宝します。
焼き魚の骨を外す時に懐紙で頭を押さえて外したり、魚の骨などを出す時に口元を隠すこともできますね。
また、食べた後の魚の骨や頭などを覆い隠すと、食べ終わったお皿がひときわ美しくなりますよ。
ちなみに懐紙は、テーブルの上には置かず、ナプキンの間にさりげなく忍ばせておくことがマナーです。
懐紙は会席料理の心強い味方なので、必ず用意して食事に臨みましょう。

美人度アップ!和菓子の食べ方


和菓子の食べるコツを押さえて
「おせんべい」
そのままかじりつくと、破片をこぼしたり飛ばしたりしてしまい周囲を汚してしまいます。
ですので、おせんべいを食べる際は懐紙の上でひと口サイズに割り、ひとかけらずつ食べましょう。
懐紙が無い場合は、お皿やティッシュペーパーの上で割るのもOKです。

「大福」
黒文字があれば、ひと口大に切り刺して食べましょう。
手で食べる場合には、余分な粉を落としてから口に運びます。
口の大きさに合わせて、粉をつけずに食べられる量を食べすすめましょう。

「花びらもち」
ごぼうが入る縁起物のお菓子・花びらもちは、大福と同じ要領で。
ごぼうも黒文字で切って食べます。切り分ける時は中指に力を入れずに切っていくと美しいです。
中身をこぼさないように注意しながら食べすすめます。

和食の作法、基本中の基本を押さえて

お造りの食べ方

意外と知らない、お造りの正しい食べ方。
お造りは彩りを考え、美しく盛られています。
大抵の場合は、旬の白身魚や貝類、マグロなど赤身の魚の刺身の盛り合わせです。
食べすすめ方は、さっぱりした白身からこってりした赤身の順に食べていきます。
淡白な白身の刺身や貝類から、盛り付けをできるだけ崩さずに食べていくことがマナーです。
わさびなどの薬味は、先の刺身に適量を乗せてから醤油につけます。
醤油が液だれしないよう、醤油の水分を切ってから口に運びましょう。
もしくは醤油の入った小皿を手で持って口に近付けてもOKです。

焼き魚の食べ方

秋刀魚やアジなどの焼き魚を食べる時、上の身を食べた後で裏返しにして下の身を食べるのはマナー的にNGです。
魚をひっくり返して食べるのは、作った人に失礼な行為と捉えてくださいね。
食べる手順は、まず、ヒレを外してお皿の右上に置きます。
次に、上の身の左から箸を入れます。
上の身を食べ終わったら、骨を外して下の身を食べて行きます。
食べ終わったら、残った骨や皮、レモンやすだちを絞った皮などは全てお皿の右上にまとめます。
大きな中骨はふたつに折ってコンパクトにまとめるとベターです。

お吸い物と味噌汁の食べ方

お吸い物と味噌汁は、すすると音が出るので「流し入れる」イメージでいただきましょう。
お吸い物やお椀は最初に蓋を開けて、その瞬間の出汁の香りを満喫します。
蓋を開ける時は、「の」の字を描くように持ち上げて、水滴をしっかりと切りましょう。
その後、お椀を両手に持って汁をひと口含みます。
それから具と汁を交互に楽しむことが美しいお吸い物と味噌汁の食べ方です。
具は箸でかきこむのではなく、つまんで運ぶのも大切。
また、お椀の底に具が残っていないかを箸で探るのはマナー違反なので注意しましょう。
持ち上げたお椀に箸先を添えて飲むと、所作が美しく見えますよ。

茶碗蒸しの食べ方

茶碗蒸しは「汁物」と捉えて食べると美しさをキープすることができます。
もともと茶碗蒸しは、お吸い物として出されていたものなのです。
まずは蓋を開けて、裏返しにして右上に置きます。
食べ始める前に、スプーンで内側をぐるっと一周なぞるようにすると、器から中身が外れて食べやすく。
具を食べ終わったら、茶碗蒸しはスプーンか箸でかき混ぜてもOKです。
細かくしてから最後は器に口をつけて汁を飲みほしましょう。

焼き海老の食べ方

海老が丸ごと調理されているのは、海老が縁起が良いとされているためなのです。
まず、頭付きの身を残して殻を取りましょう。
頭と胴体の境目に箸を入れて、奥へと回します。
すると殻から身が取れやすくなりますよ。
食べる時は箸でひと口サイズに切っても、そのまま口を付けても良いです。
海老の頭を残したまま、殻を丁寧に外すことが海老を食べる際のチェックポイント。

うどんの食べ方

うどんを食べる時ははじめに麺を箸でほぐした後、少量を取ります。
口に入れたら箸で麺の先の方をキャッチして、3回くらいですすっていきます。
そうすることにより、汁が飛び散らないようにできるメリットがあります。
また、空気に触れて麺が冷めて食べやすくするためという意味合いも。
特に弾力のあるうどんほど汁が飛びやすく冷めにくいので、慣れるまで意識的に練習しましょう。

ざるそばの食べ方

ざるそばは、そばの香りを楽しみながら盛り付けを崩さないように早く食べることが基本です。
箸でつまみやすいように盛り付けられているので、山盛りなら頂から食べます。
平らに盛られた平盛りであれば、手前から食べ始めましょう。
そばは挽きたて、打ちたて、ゆでたての状態が一番良いとされています。
そばの風味は時間が経つにつれて失われてしまいますので、出されたらなるべく早く食べましょうね。

食事と丁寧に向き合って、マナー美人になりましょう


「知っているつもり」になりがちな身近な和食にも、今回ご紹介したような基本のマナーがあります。
大人になると思い込みや間違った作法、自己流の食べ方が染みついてしまいがち。
それらを修正して、正しいマナーを身に付ければ、自ずと美しい食べ方に導かれます。

まずは普段摂っている身近な料理の食べ方から見直してみましょう。
一見難しそうに見える焼き魚などはもちろん、食べ慣れているはずの味噌汁など、戸惑うこともあるかと思います。
大人の女性としてそんな戸惑いを払拭し、自信を持って食べたいですね。
一食一食と丁寧に向き合うことですぐにマナー美人になれるはずです。
ぜひ実践してみてくださいね。

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