不妊治療の費用や注意点は?不妊治療を考える人が知っておくべきこと

不妊治療を考え始めたとき、お金のことや治療内容など気になることはたくさんあるはず。不妊治療への不安を払拭し、前向きな気持ちで妊活に取り組むためには、不妊治療の全容をまず把握することが大切です。本記事では、不妊治療の種類とかかる費用、助成制度、不妊治療に役立つ医療保険など、不妊治療を本格的に始める前に必ず知っておきたいことについてご紹介します。

不妊治療の種類と費用

子供を望んでいる夫婦の場合、子作り開始から半年~1年を目安に不妊治療を考え始めることが多いようです。公益社団法人 日本産科婦人科学会は、妊娠を望む健康な男女が避妊をしていないのにも関わらずおよそ1年経っても妊娠しない場合を不妊症と定義しています。

一般的に男女とも年齢を重ねるほど妊娠が成立しにくくなるため、30代以降のカップルでは1年を待たずに不妊治療を始めることも多いようです。

不妊治療を開始する前に、まず血液検査やホルモン測定、超音波検査、感染症スクリーニング検査などの初期検査を行う必要があります。初期検査には保険適用されるものと自費のものがあり、トータルでおよそ1万円~3万円ほどかかります。

各種検査を終え、何か異常が見つかった場合はまず必要な治療を行います。特に異常が見つからなければそのまま不妊治療に入ります。

一般的な不妊治療には、①タイミング法、②人工授精、③体外受精、④顕微授精があります。①から④へ段階が進むほどにかかる費用は高額になります。そのため、まずタイミング法から始め、妊娠に至らなかった場合は人工授精へ進み、人工授精でも妊娠が見られなかった場合に体外受精へ進み、体外受精でも受精しなかった場合に顕微授精を行うという、ステップアップと呼ばれる進め方をするのが一般的です。

ただし、不妊治療は年齢を重ねるほど成功しにくくなるので、時間との戦いという面もあります。特に30代半ば以上のカップルは時間的余裕がないため、一定期間タイミング法を試みてから、②の人工授精をとばして③体外受精へ進むという選択をすることもあります。

それでは、不妊治療の内容とそれぞれにかかる費用について見ていきましょう。

①タイミング法

医師の指導のもと、排卵日前後に性交を行う方法です。保険が適用され、費用は1回で数千円程度です。

②人工授精

排卵のタイミングに合わせ、子宮内に精子を人工的に注入する方法です。保険適用外で、1回につき1万円~3万円ほど費用がかかります。人工授精は1回で必ず成功するわけではなく、場合によっては3~6回ほど試みなければならないこともあります。

③体外受精

シャーレの中で卵子と精子を受精させ、子宮へ戻す方法です。保険適用外で、1回につき20万円~60万円ほどかかります。体外受精も一度で成功するとは限りません。国による特定不妊治療の助成があります。

④顕微授精

卵子に精子を直接注入し、人工的に受精させる方法です。保険適用外で、費用はおよそ40万円~50万円ほどかかります。

男性の検査・治療も忘れずに

不妊治療は女性だけのものと思いがちですが、実は男性の側に不妊の原因があるケースもあります。いくら女性が不妊治療を受けても、男性側に不妊の原因があったら治療の効果は見込めません。夫婦で不妊治療を決めたら、必ず夫にも不妊検査を受けてもらいましょう。

男性が受ける必要のある不妊検査としては、まず精液検査が挙げられます。保険が適用されるかどうかは検査内容によって異なります。精液中の精子数や運動している精子数を調べる基本的な検査であれば、概ね1000円程度で受けられます。

行政からの助成を活用しよう

不妊治療には健康保険の適用外となるものもあります。体外受精など高額な高度治療は健康保険が適用されないので、何百万円もかかったというケースは決してめずらしくありません。経済的な負担から不妊治療を断念する夫婦も少なくないのが現実です。不妊治療を行う際は、まず行政機関からどのような助成を受けられるかを調べ、なるべく経済的な負担がかからないようにすることをお勧めします。

晩婚化により不妊に悩む夫婦が増えていることを受け、国(厚生労働省)が不妊治療にかかる費用の一部を助成する制度があります。対象となる特定不妊治療とは体外受精および顕微授精で、1回につき15万円まで助成されます。初めて助成を受けた際の妻の年齢が40歳未満の場合は通算6回、40歳以上の場合は通算3回まで助成を受けられます。

ただし、助成を受けるには、治療を開始したときの妻の年齢が43歳未満であること、特定不妊治療(体外受精、顕微授精)以外では妊娠の可能性が低いと医師に診断されていること、法律上の婚姻をしている夫婦であることという条件を満たしている必要があります。また、所得ベースで夫婦合算して730万円という所得制限があることにも注意してください。

厚生労働省のウェブサイトを見る

国からの助成の他に、各自治体が助成制度を設けていることもあります。国の助成制度の対象からは外れている場合でも、自治体の助成は受けられることも。助成の内容などは自治体によって異なります。不妊治療を受けると決めたらまず、自分の住む自治体ではどのような助成を受けられるのか調べてみましょう。

不妊治療のための医療保険も登場

健康保険はあくまで病気が対象です。不妊は病気とはみなされないため、基本的に不妊治療に健康保険は適用されません。一般的な生命保険や医療保険も不妊治療は適用外となります。

医療保険や健康保険が適用されず高額な費用を自費で賄わなければならないことが不妊治療のネックとなっていましたが、2016年に日本生命が不妊治療にかかる費用を補償する国内初の医療保険を発表しました。

日本生命「シュシュ」

ニッセイ出産サポート給付金付3大疾病保障保険「シュシュ」は、ガン・急性心筋梗塞・脳卒中の3大疾病と死亡のほか、特定不妊治療や出産に備える保険です。シュシュの最大の特徴は不妊治療の費用が保障されること。採卵または胚移植の特定不妊治療を受けたとき、1回目~6回目なら1回につき5万円、7回目~12回目は1回につき10万円の給付を受けることができます。加入後1年が経ってから出産した際は、出産給付金を受けることもできます。

シュシュの加入対象年齢は16~40歳で、特定不妊治療の給付を受けられるのは加入後2年が経過してからとなることには注意が必要です。

「シュシュ」のサイトをチェックする

不妊治療をサポートするその他の医療保険

不妊治療の費用そのものが保障されるわけではありませんが、不妊治療中でも加入できる医療保険をご紹介します。

アイアル「子宝エール」

基本的に医療保険は通院中に加入することはできませんが、子宝エールは不妊治療中でも加入できるのが大きな特徴です。妊娠中毒症や子宮外妊娠、乳がん・子宮がん・卵巣がん、子宮内膜症、乳腺症など妊娠や出産に関連する病気が保証されるので、安心して不妊治療に取り組めるのがメリットです。

過去1年以内に、排卵誘発剤の投与、人工授精、体外受精を行っており、不妊治療以外には健康面に問題がない女性が対象となります。

「子宝エール」のサイトをチェックする

不妊治療と仕事を両立させるには?

通院回数の多さが最大の問題

不妊治療と仕事を両立させるのは非常に難しく、不妊治療を行っている働く女性の悩みの種になっています。不妊治療を優先し、仕事を辞める女性も少なくないのが現状です。

両立が難しいのは、検査・治療のために何度も通院しなければならず、通院する日は自分の都合では決められないためです。

たとえば不妊治療の検査では、「排卵日に性交し6~12時間以内に受ける検査」や「生理が始まってから10日目に受ける検査」など、1か月のうち特定の日にしか受けられない検査があります。必要な検査をしかるべき時期に受けなければ治療を進めていくことはできないので、通院を指定された日に仕事の予定が入っていても休暇を取らざるを得ません。生理開始日や排卵日は心身の状態によって変動するので、病院に行く日を前もって決めるなどの日程調整をするのは難しい面もあります。病院によっては待ち時間が長く、ほとんど1日がかりになることも。

また、体外受精の場合は排卵日が近づくと卵巣の状態を確認するために頻繁に病院へ行かなければなりません。卵子を採取する採卵日は、体への負担を軽減するため仕事を休むのが望ましいとされます。

何度も仕事を休むと、同僚・上司、取引先などにも影響が及びます。迷惑をかけるのが申し訳ないという気持ちから退職したり、正規職員からパート・アルバイトなどの非正規雇用になることを選んだりするケースは後を絶ちません。

周囲に状況をよく説明して理解を得よう

通院治療のために仕事を休むのは仕方がないことですが、頻繫に休むことによって周囲に迷惑をかけてしまうのも事実です。不妊治療への理解度は職場により大きく異なります。上司が不妊治療の必要性を理解していない職場や従業員の妊娠・出産・復帰の事例がほとんどないような職場、人手不足が慢性化しており一人休んでも仕事が回らなくなるような職場では、不妊治療しているスタッフは歓迎されるとはいえません。治療のために何度も休むうちに周囲からの風当たりが強くなり、居づらくなってしまう恐れもあります。

不妊治療と仕事の両立がどうしても難しい場合は、仕事を辞めたり働き方を変えたりするのも一つの方法です。ただ、働く女性が職を手放すことのリスクもきちんと考慮しておく必要があります。いったんキャリアにブランクができてしまった場合、今まで以上の条件で再就職できるとは限りません。また、不妊治療すれば必ず妊娠できるというわけではないことは厳しい現実です。何年も不妊治療を続けても妊娠できない可能性は残念ながらゼロではありません。妊娠も仕事も断念ということになったとき、生きがいを見失ってしまう恐れがあります。

不妊治療と仕事を両立させるためにはまず、周囲に状況をしっかり説明し理解を求めることが重要です。検査や治療のためにどうしても休まなくてはならない日があること、治療の影響により体調が優れないときもあることなどを丁寧に説明してください。そして、働けるときはこれまで以上に仕事に励み、職務に誠実に取り組んでいることをアピールしましょう。

家族からのサポートが不可欠

いつまで続ければ効果が出るのかわからないのが不妊治療の辛いところです。夫婦が力を合わせて取り組んでいかなければなりませんが、残念ながら男性の中には他人事のような態度をとる人もいます。検査や治療には少なくないお金と時間を費やすからこそ、夫側の理解と協力は不可欠です。不妊治療を始める際はまず夫婦で十分に話し合い、気持ちのすり合わせをすることが大切です。

また、不妊治療について自分や夫の両親に話すべきかという問題もあります。

子供ができないことを女性の責任とする風潮はまだまだ強いのが現実です。「子どもはまだ?」という家族や親戚からのプレッシャーが苦しいという女性も多いのではないでしょうか。不妊治療は男性より女性への負担のほうが圧倒的に重いことに加え、精神的な重圧にも苦しめられるとあっては、女性の立場はいっそう辛いものになってしまいます。

自分や夫の両親に不妊治療のことを話すべきかどうかは一概には言えませんが、話すことによって理解や協力を得られることもあります。子供ができないことをお互いの両親が心配していると感じたら、治療を受けていることだけは思い切って打ち明けてみてもよいのではないでしょうか。

焦りは禁物!じっくりと取り組んでいこう

不妊治療は高額なお金と時間を要します。検査や治療では精神的・肉体的に辛い思いをすることも。年齢を重ねるほどに妊娠しにくくなるという焦りやプレッシャー、先が見えないという不安など、精神的に苦しくなることもあるでしょう。

不妊治療は長期戦になりがちです。なかなか結果が出なくてもくじけず治療を続けていくには、不妊治療を続ける中でも自分なりの喜びや楽しみを見つけていくことが大切です。通院の途中にお気に入りのカフェで一服したり、自分へのごほうびとしてちょっとぜいたくな食事を楽しんだりなど、不妊治療中だからこそできるだけ毎日を楽しく過ごすことを考えてみてください。そして何よりも、日々がんばっている自分の体をいたわることを忘れずに。疲れを癒し、リラックスする時間を作るようにしてくださいね。

不妊治療はどうしても女性ばかりに負担がかかってしまいますが、大変なことは自分だけで背負いこまず、必要なときは夫に支えてもらいましょう。不妊治療は夫婦が互いの気持ちをじっくり話し合い、心を通わせる機会ともなります。夫と手を取り合って、明るく前向きに取り組んでいってくださいね。

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